活動報告

年頭所感

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令和2年年頭所感
転換期のスタートアップ
〜“ONE TEAM”福井で好機を活かせ〜

福 井 経 済 同 友 会
代表幹事  江守 康昌
代表幹事  林  正博
代表幹事  清川  肇


 私達は今、間違いなく大きな歴史の転換期に立っています。平成から令和へと時代は移り、令和2年の今年、二度目の東京オリンピックが開催され、世界の衆目が極東の地・日本に集まります。1964年の一度目の東京オリンピックの後、我が国は高度経済成長路線をひた走り、先進国の仲間入りを果たしました。東京2020の後、日本はいかなる展開をみせるのか、それとも何も変わらないのか、大きな転換点を迎えています。

 福井においては昨年、杉本知事が誕生し、期待値の高い県政運営が進められています。そして3年後には半世紀にわたって誘致運動が展開されてきた北陸新幹線がようやく福井開業を迎え敦賀まで延伸してきます。福井が大きく変わる好機だと確信しています。

 一方で世界経済は昨年後半から変調を示し始めており、米中貿易戦争など世界の不安定要因が明らかに日本経済に影響を及ぼしています。米中に限らず、世界各地に広がる自国優先主義が様々な軋轢をもたらしています。分断の歴史が再び繰り返されようとしているのか、全く予断を許さない状況と言えます。また、災害に見舞われ続ける日本においては、国内の少子高齢化は益々進展し、人口減少社会が本格的に始まっています。

 そのような外部環境の大きな変化の中で、北陸新幹線は福井に何をもたらすのか、何をもたらさないのか。

 大切なことはただ待つだけの状態に陥らず、この福井の地に素晴らしい成果をもたらす北陸新幹線として私たち福井県民自らが成果を勝ち取っていかなければなりません。官民が一体となってこの大きなチャンスを活かさなければなりません。私達福井人は、様々な世代や立場、考え方の違いを乗り越え、まさに“ONE TEAM”でスクラムを構築し、今こそ果敢に挑戦する熱い思いが必要です。

 同じように世界経済や日本社会の構造的な大きな変化を前にして、ただ座して不安を募らせるのではなく、我々、福井の経済人は、この転換期の時代こそ好機と捉え、新たなチャレンジへと自らを奮い立たせる真の勇気が必要な時であると考えます。

 そして、北陸新幹線「かがやき」が福井の地を疾走する日は、刻々と迫っています。

 一方で、2015年の金沢開業時に比べ、福井は地元の受け入れ態勢づくりが明らかに遅れているとの関係者の言葉も漏れ聞きます。まずは福井駅周辺の整備を早急に進める必要があります。福井経済同友会でも福井駅周辺のまちづくりのあり方について様々な提言をしてきましたが、未だ具体的な動きが弱いように思われます。

 重要な課題は駅前地区で複数計画されている再開発ビルの建設です。すでに福井駅前を主たる会場に想定し、全国から約1200人の経営者たちが集まる経済同友会全国セミナーの誘致を令和6年に決定していますが、予定通り開催できるように民間だけでなく福井県、福井市といった行政機関も一体となって各再開発ビルの早期着工を是非実現させていただきたい。県都福井の“顔”としてこれら再開発ビルの重要性は極めて高いと考えます。

 また、北陸新幹線福井開業(敦賀延伸)を見据え、福井県でも各種スポーツの全国大会誘致などを進めていますが、県内の様々な民間団体においてもその所属の団体の全国大会や協議会を積極的に本県に誘致するように呼びかけます。“ONE TEAM”の精神で準備を整え、北陸新幹線福井開業(敦賀延伸)を喜びと感動を持って迎えようではありませんか。

 一方で、開業が終わりではありません。開業が新たな福井の始まりなのだと考えます。同時に、敦賀―大阪間の早期着工と早期開業に向けて沿線各府県とも連携し、予算等の獲得に向けた動きも加速させなければいけません。ここでも福井の官民が一体となって沿線府県も含めた関係機関への働きかけが極めて重要です。

 DMOプロジェクト委員会では、インバウンドも含めた受け入れ態勢強化や観光振興を狙って県が打ち出した県観光連盟にDMO機能を持たせる方針に呼応し、民間サイドで新たにDMCを立ち上げるべく、そのための具体的な活動を進める予定です。ここでも官民の連携が欠かせないと思われます。

 政策研究委員会では、真の福井らしさを推し進めるために“ふくいらしさ”の選定基準とその策定ツール「ふくメーター」を作成し、今後新設されるであろうDMOやDMCといった機関も含めた関係団体での活用を呼び掛けていきたいと思います。福井にマッチした観光振興事業を推進するためにも各施策が統一感を持ち、しっかりとしたバックボーンに基づいて展開されるものでなければならないと考えます。

 冒頭、歴史的転換期に立っているのではないかと申し上げましたが、三菱ケミカルの会長で経済同友会の前代表幹事・小林喜光氏は平成の30年間を「日本の敗北の時代」と総括されました。令和の時代は「日本復権の時代」としなければなりません。

 そのための最大の課題は、シンギュラリティやデジタルトランスフォーメーション(DX)という言葉に代表される社会変革への対応です。VR(バーチャルリアルテイー)、AR(拡張現実)を総称するxR、あるいはAIやIoTといった最新テクノロジーが作り出す未来社会に向けて、我々県内企業はチャレンジしていくことができるかどうかです。ものづくりの県と言われた福井の産業構造を高度化し、グローバルに展開する企業群を育て上げなければなりません。最新テクノロジーを駆使して企業の生産性・効率性を一層高めなければなりません。次世代への生き残りをかけた戦いがすでに始まっているのです。

 企業経営委員会デジタル経営分科会では、そのような強い危機感の基、未来社会を見据えたICT経営の在り方を調査・研究し、啓蒙活動を実施する予定です。

 さらに同委員会健康経営分科会では、長寿社会での労働不足時代の中で、今いる社員パワーを存分に活かすためにも社員やそのご家族も含めた健康志向を重視し、高齢化と人口減少社会に適応する“福井の健康経営”の在り方を提言したいと思っています。

 いずれにしてもこの転換期を活かし、さらなる成長発展へとつながる好機としなければなりません。我々福井の経済人は、人口の少ない県でありながらもものづくりの県として日本経済における確固たる地位を築いてきた先人達のDNAを受け継ぎ、この転換期を新たなスタートアップの年とし、大きく飛躍することを期待してやみません。


用語説明

シンギュラリティ 人工知能(AI)が人類の知能を超える転換点(技術的特異点)。または、それがもたらす世界の変化のことをいう。(コトバンク)
デジタルトランス
フォーメーション
IT(情報技術)が社会のあらゆる領域に浸透することによってもたらされる変革。2004年にスウェーデンのE=ストルターマンが提唱した概念で、ビジネス分野だけでなく、広く産業構造や社会基盤にまで影響が及ぶとされる。(コトバンク)
xR AR(拡張現実)、MR(複合現実)、SR(代替現実)、VR(仮想現実)等の技術の総称。(Wikipedia)
IoT 建物、電化製品、自動車、医療機器など、パソコンやサーバーといったコンピューター以外の多種多様な「モノ」がインターネットに接続され、相互に情報をやり取りすること。「Internet of Things」の略で、「モノのインターネット」と呼ばれることもある。(コトバンク)
ICT ICT(Information and Communication Technology)は「情報通信技術」の略であり、IT(Information Technology)とほぼ同義の意味を持つが、コンピューター関連の技術をIT、コンピューター技術の活用に着目する場合をICTと、区別して用いる場合もある。国際的にICTが定着していることなどから、日本でも近年ICTがITに代わる言葉として広まりつつある。(コトバンク)
DMOとDMC DMOとは、観光物件、自然、食、芸術・芸能、風習、風俗など当該地域にある観光資源に精通し、地域と協同して観光地域作りを行う法人のこと。Destination Management Organization頭文字の略。 DMCはDestination Management Companyの略。(JTB総合研究所)