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戦略元年 〜地域品質の向上に向けて〜

福 井 経 済 同 友 会
代表幹事  江守 康昌
代表幹事  林  正博


 新たな時代の幕開けを迎える2019年は、福井にとって極めて重要な岐路となる年である。北陸新幹線県内開業、中部縦貫自動車道県内全線開通をはじめ、続いて大阪万博、中央リニア新幹線開業といった国家的事業がこの10年内に福井の経済圏下で繰り広げられる。その中でも、北陸新幹線の県内開業は、金沢の目をみはるような成功も手伝って、福井にとっては国内のみならず、海外からの来訪者までを含めて、その存在が認知される千載一遇の好機となる。その開業まで残り4年となった今年は、開業インパクトの最大化に向けて具体的なアクションプランを共有し、10年後を見据えた戦略的な活動をオール福井で本格化させるデッドラインの年とも言える。

 加えて、従来、当会が県都再生の重要ファクターと位置づけてきた県庁移転についても、今般、知事から県政での取り組みが明言されたことで、より一層プランの具体化に弾みがついた。

 かような時機到来に、本年を戦略元年と位置づけ、以下につき緊張感を持って取り組む。


1.福井の地域品質を向上するための、戦略プラットホームづくり

 地方を取り巻く課題やリソースは、ほぼ同様のため、近年、人を取り合う競争は益々熾烈を極めている。このような競争環境下において、福井が主眼とすべきは、競合する他地域に対しての優位性の誇示ではなく、福井という地域そのものの質の向上である。

 昨年、当会では、福井商工会議所と共に「福井らしさ」の可視化に取り組んだ。そこでは福井らしさを測る目安として「直(ひたむき)、真(ほんもの)、幸(しあわせ)」の3つの分野から60個の視点を洗い出した。
(詳細はhttp://www.f-doyukai.jp/070_teigen/pdf_30_05.pdf参照)
これらの視点の内、物事に取り組む姿勢としての「直(ひたむき)」度合や、生み出した成果の「真(ほんもの)」度合を福井の地域品質ととらえ、ものづくりで培った品質向上のスキルを活かし、その向上に向けて地域をあげて取り組むことを推進する。

 地域品質向上には、「福井らしさ」に基づく10年後の地域ビジョン策定と共に、新幹線開業迄と、新幹線開業後とに分けたアクションプランのとりまとめが急務である。そのために、オール福井での策定組織や策定機会の実現に向けた働きかけを積極的に行う。また、戦略プラットホームの1つとしてDMO(*1)の設置を引き続き検討する。

 DMO(*1) DMOとは、観光物件、自然、食、芸術・芸能、風習、風俗など当該地域にある観光資源に精通し、地域と協同して観光地域作りを行う法人のこと。Destination Management Organization(デスティネーション・マネージメント・オーガニゼーション)の頭文字の略。(JTB総合研究所)


2.福井の質感を生かした街づくり

 福井に暮らす人々の生活満足度を向上する街のあり方とは別に、特に交流人口拡大に向け、交流の接点となる新幹線駅舎や駅周辺、観光地に対して、いかに「福井らしさ」を織り込むのか、また、交流人口拡大に寄与するインフラをどう整備するのかについて議論を深める。

 低迷を続けるインバウンドや、外国人労働者の拡大に結びつく外国人向けのファシリティの在り方について検討を進める。

 一方、冒頭にも記したように、年頭の知事による県庁移転についての検討宣言は次代の街づくりの進展に大きく拍車をかけるものであり、議論の早期着手を期待する。県庁舎の耐久年数に固執することなく、また当会提言含め、これまで出された諸々の案に囚われることなく、心機一転、今の福井を取り巻く好機を踏まえ、改めて具体的な跡地利用を含めた移転計画立案を今後4年内にまとめることを強く求める。


3.福井の象徴となる人づくり

 「福井らしさ」の本質は、福井で生まれ育った人々の生き方である。よって、その地域を担う人づくりでは、教育機会にとどまらず、あらゆる政策や経済活動においても、福井で生まれ、暮らす人々の「福井らしい人」への成長を助長するという意図の基たゆみなく取り組む。

 学校教育の場においては昨年に引き続き若手教諭との交流機会を設け、次代を担う教諭および生徒に対し、福井の企業の特質や企業経営の考え方等を紹介し共感を育む。

 産業人育成では、IT社会における既存産業の高度化について、IoT・ICT・big data・AI等の中小企業経営への実装化や支援体制の研究を進める。また、企業の根幹を揺るがす喫緊の課題である人手不足や、本年4月から順次施行となる働き方改革関連法案への対応等についても、勤勉やひたむきさを旨とする福井ならではの取り組み方を議論する。


さいごに

 北陸新幹線県内開業直後の2024年に福井開催が決定した「全国経済同友会セミナー」について、関係者のみならず広く周知徹底を図る。当該セミナーは全国44の経済同友会から1,000人以上の経済人が来県する大規模コンベンションであり、公益社団法人経済同友会が1946年に発足して以来、初の福井開催でもある。新幹線県内開業に伴う福井の認知度向上の追い風とすべきことはもちろん、セミナー開催後は、参加会員企業の会議、報奨・研修旅行、展示会・見本市等多くの集客交流が期待できるため、セミナー開催効果の拡充に向け、行政や関係団体との情報共有化を強力に推し進める。


以上