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年頭所感

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All for Fukui 〜オール福井で、未来を創る〜

福 井 経 済 同 友 会
代表幹事   八木 誠一郎
代表幹事   江守  康昌


 昨年は英国ではEU離脱が決まり、米国では大方の予想を覆してトランプ氏が次期大統領に決定しました。波乱に満ちた平成28年に続き、29年も予断を許さないとの緊張感に満ちた思いで新年を迎えました。

 私達の故郷・福井は、かつては北前船航路で栄え、戦後も物づくりの県として少なからず日本の戦後復興と繁栄に貢献してきたと自負しています。明治11年の福井市の人口は国内主要都市では15番目の人口を抱えていました。戦後を見ても本県の鉱工業生産額は北陸三県においては隣県の石川県に近い額を計上し続け、バブル景気に入る1985年には人口では本県を大きく上回る石川県の94%にまで迫っています。

 それが平成の時代には福井市の人口は国内主要都市の86番目に落ち、2014年の鉱工業生産額は石川県の69.7%に、富山県に対しては51.9%にとどまっています。ご承知のように北陸新幹線は金沢で止まっており、北陸における本県の相対的な地位低下が心配されています。ようやく県内での新幹線工事の槌音が響き始め、昨年は福井駅西口に県都のアイコンとなるハピリンが誕生し、久しぶりに駅前に賑わいが戻ってきたものの、本格的な県都再生はまだまだ道半ばです。トランプ大統領誕生後の世界の政治経済が不透明なように、福井の未来もまた明確に描き切られていない現状にあると感じます。

 こうした厳しい現実を見るにつけ福井の経済人として強い危機感を禁じ得ません。 一方で、来年には福井国体が開催され、6年後には北陸新幹線の金沢―敦賀間が開業します。福井にとって大きなインパクトをもたらすであろう北陸新幹線の県内延伸を好機と捉え、かつての活気ある福井を取り戻し、さらに発展させることができるかどうか。まさに私達は新しい福井の未来を開く扉の前に立っているのだと思います。扉は大きく、重いかもしれませんが、これがラストチャンスと思えてなりません。

 金沢は10年前から官民あげて開業を見据えた取り組みをし、観光客が増えすぎて一部に問題が出てはいるものの、その成果には目を見張るものがありました。今や一般認知では、北陸三県という横並びの評価から、日本海側の一大都市金沢としてのステータスを得つつあります。これから6年後に我々にも同様の好機と脅威が訪れます。福井が、金沢とはまた別の魅力にあふれた都市として認知されるかどうか、大切な準備期間の始まりです。今こそ私達福井県民は政治、行政、民間、教育機関、金融機関、マスコミを問わず、英知を結集し、オール福井で北陸新幹線延伸を見据えながら地域の将来ビジョンを明確に示し、具体的な行動に着手する時だと考えます。

 新たな時代の創造に向けて大切なことは、明確なコンセプトに基づいてブレない施策をあらゆる分野で統一感を持って展開していくことです。その際に重要となるのが福井らしさとは何なのか、福井の本質とは何なのかということであり、いわば福井人としての共通の誇りを確立することです。同時にそこで巻き起こる議論を通して県内各層・各界にまたがる県民のベクトルを合わせ、共通認識の基に諸施策を有機的に展開していくことです。

 このような福井県全体のアイデンティティーとなる、福井人としての誇りの基とも言うべき「福井らしさ」を見える化し、共有化するために、県内の経済団体、行政といった関係機関に呼びかけ、地域が一体となって協議していくことを目指したいと思います。このことを今後の私達の大切な活動と位置づけると同時に、福井経済同友会の内部においても役員はもちろん、一般会員と共に協議を進め、同友会活動のより一層の活性化も図りたいと考えています。

 将来ビジョンはもちろん重要ですが、喫緊の課題は人口減少への対処です。これについても福井らしさ、福井の強みを活かし、ひとり親家庭も含めた子育て世代の移住を促進すべきと思います。子育て環境に恵まれた安全で自然豊かな福井、子供たちの学力も体力も日本一の福井、待機児童ゼロの福井。これらをアピールした移住対策を確立し、施策実行に際しては地元経済界も積極的に協力すべきであろうと思います。例えば雇用面であるとか、就活援助であるとか私達民間でもできることはあるだろうと思います。

 併せてUターン率のアップを目指し、郷土愛を育む教育をさらに推進すべきです。故郷への愛と矜持があれば、たとえその身は都会にあっても、異国の地にあってもその人は立派な福井人です。大学卒業時にUターンする人もいるでしょうが、そのまま県外に留まる人も少なくないでしょう。でも、子育て世代になった時、子供を福井で育てたいと考えるかもしれません。さらにはリタイアした後の人生は故郷でと、思いをはせるかもしれません。そしてその思いを行動に移したいと考えるかもしれません。これらのタイミングがUターンのトリガーとなり、一歩を踏み出させる機会の創出が求められています。

 私達は人生の生活シーンに合わせてこのような3つのUターン戦略を構築すべきと考えます。そのためにも故郷への愛と矜持を持った福井人の育成が学校教育のベースとして欠かせません。教育関係者や行政関係者の皆様のご理解とご尽力を一層期待しますし、私達もこれまでも実施してきたインターシップや経済人による学校での講義等の協力も引き続き重視していきます。とにかく人口減に歯止めをかけないとやがて産業自体も活力を失い、地元企業と地域社会の崩壊が起きかねないと強く危惧します。

 北陸新幹線については敦賀以西へのルートが決定した今、一日も早い福井延伸と同時に敦賀開業後の関西延伸の早期実現を望みます。敦賀開業から10年後には大阪まで延伸させ、北海道新幹線と共に全線開通させるべきです。北陸三県はもちろん京都・大阪両府と共に、そのための財源確保を国に働き掛けるべきだと考えます。また、中京地区へのアクセス向上も重要な課題と言えます。敦賀開業後のダイヤ編成に関しても「かがやき」が福井県民にとって利用しやすく、かつ3時間以内で福井―東京間がつながる速達性の高いダイヤであることを要望します。

 北陸新幹線の県内延伸と共に、県都福井の再生も大きなテーマと言えます。JR福井駅前では、地元金融機関が中心となった再開発構想が浮上しています。この動きに呼応して県庁、福井市役所の移転問題も含め、駅前地区のゾーニングを決めるチャンスであり、官民一体となった新幹線開業に対応した駅前整備への着手をこの場を借りて各方面に呼びかけたいと思います。同時にこの際の街づくりにおいても先述の"福井人の誇り"に基づいた構想の推進が重要だと思います。

 エネルギー政策については、高速増殖原型炉「もんじゅ」の廃炉決定など福井県にとって厳しい状況が続く中で、年明け早々に日本原子力研究開発機構が県内民間企業を中核とした廃炉ビジネスを推進する企業群の育成方針を示したことについて、地元経済界としても注目したいと思っています。
 国策である原子力発電に積極的に貢献してきた地域が、原子力エネルギ―に対する世論の変化によって衰退するようなことがあってはならないことであり、今後具体的な成果を本県にもたらすことを期待します。



 今年は福井経済同友会の役員任期2年の最終年となります。同友会としての主要な活動である提言についても、この春に相次いで発表することになります。まず、企業経営委員会では、高齢化社会に対応した地盤産業の育成を目指し、「しあわせ元気産業」の創造を提案、医療・介護現場と他産業の交流、さらには健康経営という新たな概念についても積極的に提言する予定です。

 人づくり委員会においては就職のためのキャリア教育を脱し、明日の福井を担う人材の育成のためのキャリア教育として、アントレプレーナーシップと福井に貢献する意識を持った人材教育の在り方について報告をまとめる予定です。

 おもてなし委員会では福井国体に始まり、北陸新幹線開業を見据えて「福井おもてなし十策」として「福井おもてなしマスター」の育成などを提言する予定です。

 以上、具体的な視点として"福井人の誇り"の確立に始まり、人口減少対策、北陸新幹線、街づくりに関して、さらに今春に予定されている委員会の提言の概要について年頭の所感を述べさていただきました。この他にも様々な課題が山積していることは十分に承知していますが、今後、福井経済同友会としては論点を絞ってより具体的に、戦略的に動いていきたいと考えており、その方針に基づき所感をまとめさせていただいた次第です。

 今後は今春の各委員会の提言発表の他、福井の活性化のために今まで以上に活動を強化していきたいと考えています。特に、北陸新幹線敦賀開業のための準備態勢の強化はハード、ソフトの両面で統一感を持った戦略構築が求められており、行政機関や他団体との連携を強めてオール福井の基でその一翼を担うべく頑張っていく所存です。どうか今後とも福井経済同友会へのご支援、ご協力をお願いします。