活動報告

年頭所感

発信力を高める!   〜明るい未来の創造に向けて〜

福 井 経 済 同 友 会
代表幹事   田中   保
代表幹事   八木 誠一郎


 世界経済は欧州債務問題などの影響で、総じて減速感が強まっている。一方、日本は震災復興需要で景気浮揚が期待されているが、新政権には将来を見据えた成長と発展に取り組んでもらいたい。積極的な経済対策に市場の期待感が高まり、既に明るい兆しも出始めている。先送り政治には終止符を打ち、国民の負託に応えて、日本の力強い復活を迅速に成し遂げることを期待する。

 福井県は子供たちの学力・体力、雇用環境、家計の収入・資産などが全国トップクラスにあり、「住み良さ」では全国上位にランクされ、「幸福度日本一」の調査結果も出ている。これまでに育んできた固有の歴史、伝統、文化、風土などが土壌となって培われたものであり、少子高齢化と人口減少の進展、グローバル化が加速する中、我々はこうした豊かで住み良い福井を次の世代に引き継ぐ責務がある。
一方で、県民の勤勉さと粘り強い気質、旺盛な独立精神に支えられ、モノづくりの県として優れた技術を持つオンリーワン、ナンバーワンの企業を数多く輩出してきた。こうした福井のモノづくりのDNAを継承・進化させ、産業の発展に資することも我々の使命である。
その緒として、我々はこうした福井の優位性や良さを、これまで以上に県内外に発信していきたい。豊かで住み良いこと、優れた製造業が集積していることなどは、福井にとって大きな宝であり、強みである。これらを知らしめることで、県外における福井の認知度が高まり、交流人口やビジネスチャンスが増えるだけでなく、県内においては生まれ育った地への誇りや愛着も高まる。誇りや愛着が高まることで地域への関心が強まり、地域との関わりや絆が増す。この連鎖により人のネットワークを広げて地域力を高め、更にはふるさと回帰や若者の定住促進につなげることが必要である。

 我々は、発信力を高めることで夢と希望の抱ける地域づくり、そして明るい未来の創造に力を尽くしていきたい。


1.「100年企業」めざして

 グローバル化への対応、人口減少の進展による国内市場の縮小など、企業の経営環境はますます厳しさを増している。こうした厳しい時代を迎え、自社の強みや独自性を発揮しながら、環境の変化を見極めて市場の多様なニーズに的確に対応していくことが求められる。
 松尾芭蕉は「不易流行」という言葉を残している。「不易流行」とは、本質的なものを守りながら、一方で新しい変化を取り入れ、より多くの価値観を創造していくことを示している。経営にとって、変えてはいけないもの、変えなければならないものを見定めることが必要であり、不易即ち変えてはいけないものが経営理念であり、流行即ち変えなければならないものが経営戦略であるといえる。
 福井県は100年企業の輩出率が全国上位にある。我々はこうした100年企業の生き様をお手本に新たな企業価値を創造し、雇用の拡大をはかることが求められる。モノづくりの県として引き継がれたDNAに加え、100年企業の経営哲学や理念、外部環境への適合、トップのリーダーシップ、人材育成などから自ら変革すべきことを学び、弛まざるイノベーションへの挑戦や新たなビジネスモデルの構築をしなければならない。

2.ストップ・ザ・人口減少!

 少子高齢化と人口減少の進展により、若い世代の人材確保は喫緊の課題である。人口減少をくい止めるためには、行政、企業、地域住民が一体となって危機感を共有し、有効な手立てを早急に講じることが必要である。
 福井県の人口は80万人を割り込み、2025年に73.6万人、2035年には67.6万人と推計されている。生産年齢人口も2035年は37.1万人と、2010年と比較し12.3万人も減少する。一方で、県外へ進学するのは毎年約3000人弱であり、卒業時には800人足らずしか福井で就職しない。2000人以上が県外で職を求める結果、人口の社会減少は止まらない状況にある。
 こうした趨勢を放置すれば、高齢者の増加と労働力の減少が定着し、地域経済は縮小、地域社会は寂れて活力が蝕まれことは必然である。人口減少をくい止めるために若者を如何に福井に帰すか、座視せずに手を打たなければならない時である。
 「ふるさと回帰」の動きが活発化するものの、福井へのUターンを希望する若者にとつて最大の障害は雇用の場である。福井県はものづくりの県として、オンリーワン、ナンバーワン企業が多く、企業の大きな課題は有為な人材の確保である。その方策として、企業とUターンを希望する人材のマッチングをはかり、就職につなげるために全員参加型の福井県挙げてのネットワークづくりが必要である。

3.交通ネットワークを人流・物流の拡大に活かせ

 福井県の持つポテンシャルを高め、経済の成長と発展をはかるためには、物流・人流の拡大は急務である。そのためには交通ネットワークを早期に完成させ、関西圏や中京圏との広域の経済連携を更に進めることが必要である。
 交通ネットワークの軸となる北陸新幹線は、敦賀までの正式着工が決定したが、2015年春の金沢開業に遅れること10年以上の予定である。この間、観光、消費・支店機能のストロー化など、福井県に及ぼす影響は深刻なものが予想される。石川県や富山県との経済格差が広がり、福井県の持つ優位性が埋没してしまう懸念も大きく、その対応策を早急に練り上げる必要がある。かつ福井県にとって北陸新幹線の経済効果を最大限に享受するためには、関西に早期につなぐことであり、関西との連携を積極的に強化することも欠かせない。
 世界の成長センターと称されるアジアは、生産拠点として、消費市場として躍進しているが、この成長と活力を福井に如何に取り込むかが重要な課題である。アジアと日本海を挟んで向き合っている福井県は、後背地に関西圏や中京圏を抱え、地理的な結節点としての優位性は大きい。この優位性を経済の成長と発展につなげるためには、敦賀港を最大限に利活用するとともに、北陸新幹線、舞鶴若狭自動車道、北陸自動車道、中部縦貫自動車道なども含めた交通ネットワークを早期に完成させることが不可欠である。

4.エネルギー先進地としてこれからも貢献

 日本の現状において、原子力発電は重要な電源であり、将来のエネルギーミックスを検討する上で不可欠である。これまで、福井県はエネルギーの先進地として、研究の成果、技術基盤、人材などを着実に蓄積してきた。国の原子力政策がどうであろうと、これまでのようにエネルギー分野での貢献をめざすことが必要である。
 福島原発事故以来、原子力発電に対する「安全・安心」の確保は想定外が許されず一段と厳しい対応が迫られているが、福井県では現場でのあらゆる事故を想定し、研究、研修、訓練、人材育成などが進められている。こうした「安全・安心」の取り組みは福井県が持つ優位性であり、更にレベルアップし、世界の「安全・安心」のフロントランナーとしての地位を確立すべきである。
 原子力発電について40年以上の原子炉は稼働させない方針が示された。福井県の原発は40年以上経過が3基、30年以上が5基ある。廃炉処理には長い期間を要し、これを見据えて今から研究、技術、人材などの面で蓄積を図ることが必要である。嶺南地域には若狭湾エネルギー研究センター、福井大学附属国際原子力工学研究所、日本原子力研究開発機構、事業者の研究所などのエネルギー関連施設が集積し、インフラや人材は整っている。廃炉処理や除染技術の確立は時代の要請であり、この分野に焦点を絞った産学官連携によるオール福井の体制を整え、地元企業の積極的な参加を促しながら新たな産業の創出に向けて取り組むことも必要である。


当会の「基本的態度」には、高い志と見識、品格・品性を兼ね備えた経済人として、利害を離れた立場で自由闊達に論議し、積極的に発言し行動することを掲げている。我々はこの原点に立ち戻り、先見性のある政策提言を世に問いながら発信力を高め、敢然と、気概を持って活力ある福井の実現につなげたい。

以上