活動報告

年頭所感

「めざめよう、ふくい」

福 井 経 済 同 友 会
代表幹事   田中   保
代表幹事   八木 誠一郎


 世界経済は、欧州の財政危機が更に拡大する懸念、米国の自律的な回復傾向の弱まり、高い成長率で世界経済を下支えしている新興国のインフレと成長が両立するかなど、依然として楽観視できない状況にある。とりわけ、欧州の財政危機の拡大が世界経済の大きなリスク要因になっている。我が国経済においては、東日本大震災から立ち直りの状況にあるものの、欧州の財政危機や米国債の格下げ問題をきっかけとした世界経済の減速に急激な円高が加わり、不透明感を強めている。
 我が国は、最優先すべき東日本大震災からの復旧・復興に加え、急速な少子高齢化と人口減少の進展、グローバル化、税収を上回る国債発行と限界点を超えた国の長期債務、税と社会保障の一体改革、TPPへの対応など、喫緊の課題を抱えている。これまでの重要な課題に対し抜本的な方策を講じることなく、対処療法的なその場しのぎの施策を続け今回の東日本大震災を迎えたわけである。長く続いた政治の混迷によりこうした状況が放置されていたが、国民にもその責任の一端はある。

 重要な課題解決への取り組みが遅々として進まず、閉塞感が増していく現状では、地方は国に頼らず自助努力で自らの道を切り拓いていくことが必要である。破綻に近い国の財政状態からは、東日本大震災への復旧・復興を果たしながら地方を支え続けることはもはや不可能である。こうした現状に置かれていることを認識し、地域の自立をはかる覚悟が今求められている。
 地域の成長と発展は、新たな価値創造を通して成し遂げられる。福井県はエネルギー先進地として、世界でも有数の拠点を形成している。福井県がエネルギーと関わって40年余り、その歴史の中で育まれたハード面でのエネルギー関連施設、それを活用したソフト面での研究機関や大学などの貴重な資産を数多く有している。こうした優位性を更に発揮し、磨き上げることで新たな価値は創造される。
 地域の担い手が減少し福井の活力低下が懸念されるが、福井の強みを活かし、得意分野に資源を集中して夢と希望がもてる社会を実現することが我々の責務である。こうした使命を自覚し、活力ある地域社会の創造のための将来ビジョンとそれを具現化する地域戦略に取り組み、未来への飛躍をめざしていきたい。


1.企業"長寿化"への挑戦

 グローバル化の急速な進展とともに、ヒト、モノ、カネ、情報が地球規模で行き交い、それに伴い国内の産業構造も変化を余儀なくされた。こうした中で、経営環境も一段と厳しさを増し、企業が生き残るには、自社の立ち位置を見定めながら環境変化へ素早い対応をすることで、グローバル化時代を生き抜かなければならない。
 福井県は100年以上前に創業した企業の輩出率が全国7位と上位にある。こうした企業は戦災や震災などの幾多の困難を乗り越えてきたが、時代の変化、つまり環境変化に対応して「新たなもの」を作り出してきたともいえる。時代の変化を見据えて、「変えるべきもの」、「変えないもの」を選択し、変革した企業が今日を迎えたわけである。
 こうした自社の強みの源泉を見極め、時代の変化に合わせて企業内イノベーションに挑戦し、新たな企業価値を創造して企業の永続性を高めなければならない。

2.人流、物流のルート整備を

 世界の成長センターとして世界経済を牽引する東アジアの成長を取り込み、観光振興による交流人口拡大をはかるためには、総合交通体系を整備促進することが喫緊の課題である。
 我が国日本海側地域の中心部に位置し、後背地に関西圏や中京圏を抱える敦賀港は、東アジアの成長を取り込む上で潜在力は大きい。敦賀港は日本海側拠点港の機能別拠点港として選定されたが、中国航路の開拓や従来航路の増便、コンテナ貨物取扱量の拡大を強化して貿易の拡充をはかり、ヒトとモノの流れを太くすることで一刻も早く潜在力を顕在化しなければならない。
 北陸新幹線は昨年末にようやく敦賀までの延伸が正式決定され、福井、敦賀までの一日も早い開通が望まれる。一方、3年後には東京―金沢間の全線が開通見込みであり、金沢止まりが続いている期間は、福井県に与える影響をプラスに転じさせる努力も求められる。とりわけ観光客の本県流入促進や東京―小松便の便数確保などを県挙げて早い段階から取り組む必要がある。
 何よりも北陸新幹線は関西につないでこそ投資効果や経済効果が生まれる。これに舞鶴若狭自動車道、中部縦貫自動車道などの高規格幹線道路を早期に全線整備開通させ、敦賀港も含めた広域交通のネットワーク化をはかることで、人流・物流は拡大し相乗効果が発揮できる。こうした総合交通体系の整備促進は、北陸圏をはじめ関西圏、中京圏との広域連携をはかりながら進めることが必要である。

3.人材"未活用"からの脱却築

 人口減少と少子高齢化が進展し地域の活力低下が懸念される中、次代の地域を支える人づくりは早急な課題である。
 福井県の課題の一つに、福井県外の大学に進学し、そのまま県外に就職する優秀な人材が多いことである。一方で、県外に就職はしたものの福井にUターンを希望する若い世代や、定年を迎えこれまで培ったノウハウを地元福井で活かしたいと考える高齢者も多い。こうした人材のニーズを汲み取り、地元雇用の情報提供や企業とのマッチングの役割を果たす組織を立ち上げ、福井への帰住を進めることが必要である。
 これまで、当会では高校段階での職業人育成について、「社会人としての心構えやマナー(挨拶、服装、応対など)」、「コミュニケーション能力の育成」などをカリキュラムに反映し、企業のニーズを汲み取るべきと提言してきた。福井県では、職業系高校における教育の質の向上や次世代の産業人材育成の方策を検討する「次世代育成会議」が設置された。次代を担う職業人の育成は急務であり、企業、学校、行政がベクトルをあわせて取り組まなければならない課題である。
 福井県は全国的にも有効求人倍率が高く、失業率は低い非常に優れた雇用環境にある。人口減少の進展とともに生産年齢人口が減少する中で、若者の県内就職、職業人の育成、高齢者や女性の活躍など、地域を支える人づくりに地域一体となって取り組むことが必要である。

4.今こそ「エネルギー」立県

 福井県は原子力発電だけでなく、訓練施設、研修施設、研究施設、若狭湾エネルギー研究センター、福井県国際原子力人材育成センター、福井大学附属国際原子力工学研究所などのエネルギー関連施設が集積し、世界でも有数のエネルギー拠点を形成している。これらの施設を活用し、安全・安心への貢献、産業への技術移転、医療への応用、人材育成などの様々な分野でその成果が花開いている。将来的には廃炉、除染などの分野で研究開発を進め、ビジネスとして活かせるチャンスもある。
 こうした現に保有しているエネルギー関連の有形無形の資産を更に活用し、地域の成長と発展をはかることが必要である。今後、福島原発事故の知見と経験を活かした安全・安心の取り組みは徹底的に要求される。エネルギー関連施設が集積している福井は、安全・安心への取り組みのための訓練、研修、研究に向けて、ハード、ソフトの両面でインフラは充分に整っている。この優位性を発揮し、世界の安全・安心の先進地をめざすことが必要である。


「第110回関西地区経済同友会会員合同懇談会」は、本年7月20日(金)、21日(土)、敦賀市で開催予定である。「エネルギー」をテーマに取り上げ、福井県がエネルギーに取り組んできた歴史を通じ、福井の独自性、地域性とともに我々の活動を発信したい。

以上