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対話と交流による企業と地域の共生 〜いきいきと、持続的な発展をめざして〜

福井経済同友会   
代表幹事 今村 善孝
代表幹事 玉木  洋


 福井経済同友会は、平成17年11月1日に創立50周年を迎え、半世紀の輝かしい歴史を刻むとともに、新たな一歩を踏み出す年を迎えた。当会は、高い志と見識、品格・品性を兼ね備えた経済人として、様々な事業活動や政策提言を通じ、地域経済社会への貢献と発展をめざしてきた。地域とともに歩む当会として、これまでに積み重ねてきた歴史と伝統を糧とし、めざすべき未来像を描きながら新たな時代を切り拓く飛躍の年としたい。

 我が国にあっては、本格的な人口の減少と高齢化を迎え、労働力の減少や社会給付の増大などで経済活動の停滞や縮小、社会の不安定化などが懸念されている。こうした将来不安を取り除くために、郵政改革、三位一体の改革、公務員改革、財政構造改革などのあらゆる構造改革を進め、「小さな政府」づくりをめざすとともに、民の活力により次代の礎を築くことが必要である。
 地域社会においても、少子高齢化、グローバル化、情報化、地方分権化など地域環境の変化で、地域を巡る新たな課題が生じている。ことに、地域を支える担い手が減る中で活力低下が懸念され、地域がいきいきと持続的に発展するための新たな価値観とそれに立脚した地域づくりが求められている。
 こうした時代を迎え、我々経済人は地域社会の一員として果たすべき役割と責任を自覚しなければならない。CSR(企業の社会的責任)は時代の潮流となりつつあり、企業は公的な存在として地域に根ざした経営がより不可欠となってきた。耐震偽装事件や独禁法改正など企業の存亡をかけた問題が起きているが、CSRはまさしく経営の根幹である。我々は、本来の企業活動による地域社会への貢献は勿論のこと、社会的価値、人間的価値を大切にしながら、地域にとって信頼される企業をめざすことを断固として決意し、指導力を発揮すべきである。

我々の活動

○対話の推進

 当会は、地域社会への貢献めざし様々な団体、機関と交流を深め情報の共有化をはかってきた。とりわけ、対話を重視しコミュニケーションの確立、深めることに努めてきた。この対話から生みだされた課題を共有化しながら事業活動に取り組んでいきたい。
 会員との対話を更に進めることで参加意欲の向上をはかり、会員企業との対話により当会の活動を浸透させ、地域との対話により当会の認知度を高めるとともに地域の実態とニーズを取り込んだ活動としたい。あらゆる対話を積み重ねながら情報を発信し、相互理解と信頼関係、そして連携強化をはかっていく。

○社会から信頼される企業経営めざして

 CSRへの関心が一段と高まっている中で、企業経営の公明性、透明性を高めるとともに、企業が地域社会にとって好ましい存在であることが求められている。企業は社会的存在として、利益追求だけでなく地域社会との調和を保ちながら活動していかなければならない。
 CSRを殊更声高く言わずしても、企業には創業の精神や経営者の信条などが社訓・社是などとして息づいている。こうした企業の理念が、経営者から従業員に至るまで真に理解され、それが企業風土として根づき、社員一人一人の行動となって現われることが必要である。
 一方、労働力が減少する中で、社員にとって働きがいのある職場を提供することが地域社会からは求められている。社員がいきいきと働き、自己実現できるような企業風土を醸成することが地域社会からの信頼を勝ち得、大きな貢献となる。
 地域経済活性化のためには我々経済人が果たす役割は大きく、グローバル化による一層の市場拡大を迎え、独自の商品・サービス開発により競争力を高めることが求められている。さらには、活性化の核となる産学官の連携を一層実りあるものとし、モノづくりへの強化、新しい産業分野への進出や新規創業の支援による雇用を創出することも必要である。

○自立した地域づくりめざして

 「国から地方へ」「官から民へ」と地方分権への流れの中、地域は自らの手に委ねられることとなり、創意と工夫、地域の特質を活かした独自の地域づくりが可能となった。また、本格的な人口減少や高齢化を迎え、個人の価値観やニーズの多様性が増し新しい地域主権型社会の構築が急がれる。
 県内では、市町村合併が進められたものの、合併による行政の効率化や財政再建など本来の合併効果を得るのはこれからである。合併の目的は地域が自立することであり、民間の経営管理や顧客意識、コスト意識などの経営手法を取り入れた改革が不可欠である。
 国と地方の役割を見直しながら市町村合併の目的を果たした後は、道州制を視野に入れた研究が必要である。道州制の取り組みは、合併の枠組みを先行させるのでなく、何故道州制なのかといった本質を充分に見極めなければならない。
 市町村合併の進展や道州制への展望が論議される中で、広域化された地域づくりのグランドデザインを描くとことも急がれる。人口減少下での地域づくりや公共交通のあり方、都市再生のためのまちづくり、原子力との共生と地域振興など課題は多いが、限られた地域資源を選択と集中により絞り込み、持続可能で自立した地域づくりに取り組んでいかなければならない。

○次代を担う人づくりめざして

 地域の人口減少を迎え、次代を担う人づくりが急がれる。育む力の低下も叫ばれて久しく、様々な課題を抱えながらも解決への道筋がついていない。
 こうした中で、地域の育む力を高めるには地域が一体となって取り組むことが必要である。家庭は教育の原点であり、父親、母親を始めとした家庭が教育に参加するよう、社員に促すのは企業の使命である。社内研修等あらゆる機会を利用し、親としての務めを啓蒙すべきであり、それは地域貢献としての意義も深い。
 育む力を高めるには、教育の現場である学校が最も重要な役割を持ち、地域社会が一体となって学校運営に関与することが必要である。当会は学校や教育関係との対話を進めてきたが、対話を更に進めながら連携・交流を深め、人づくりに貢献していきたい。
 我々は経済人として、企業内で有為な人材を育て上げることも大きな役割である。日々の業務や社内研修を通じ、企業人として、社会人として通用するような人材育成をめざさなければならない。


 当会が節目の50年を迎えた今、企業も地域もかってないスピードと規模の変化の波に置かれている。こうした荒波を乗り越えるには、将来を見据えたビジョンの確立とそれに向けての行動が必要である。我々は、同友会が設立された精神に立ち戻り、未来像を描きながら地域貢献による新たな発展をめざしていきたい。