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企業の自立、地域の自立〜CSR(企業の社会的責任)で築く相互信頼〜

福井経済同友会   
代表幹事 前田 征利
代表幹事 今村 善孝


 福井経済同友会は、昭和30年11月に設立され、本年度には創立50周年の記念すべき、輝かしい年を迎える。日本経済の進歩と安定に寄与するため地域経済に如何に貢献するかを使命とし、以来半世紀にわたり、一貫してより良い地域社会の実現のため諸課題に取り組んできたところである。幾多の先輩によって築きあげられた栄えある歴史を我々が引継ぎ、更に高めるよう諸事業を進めていきたい。
これからの地域社会は、人口減により存立基盤が大きく揺らぎ、社会経済構造やライフスタイルが大きく変化するものと予想される。子供が減り、若者が減り、働き手が減る中で、活力を失わず持続的に発展する自立した地域社会の確立が急がれ、我々もこの大きな課題に取り組んでいかなければならない。自立するために地域はどうあるべきかを見据え、次の創立100周年に向けての第一歩を確固として踏みだしたい。

 日本経済は、2003年後半からの輸出と設備投資を主因とした景気回復が2004年にはより一層鮮明となり、後半からの輸出減速等による成長率の鈍化が見られるものの、民主導の自律的回復を確実に歩みつつある。
 地域経済においては、公共事業の減少傾向で影を落とす中、昨年始めから輸出・生産の増勢が持続する基調にあり、製造業を中心として緩やかに回復した。とはいえ、地域、業種、規模などによりその回復感は様々であり、実感も乏しい。ことに、昨年7月の福井豪雨は地元経済を大きく脅かした。
 全国的にも、台風、集中豪雨、新潟県中越地震などの災害が多発し、地域の経済活動に大きな打撃を与え、住民の健全な日常生活を破壊した。地域が活き活きと且つ持続的に発展するには、安全・安心を根底においた防災に対する地域社会の危機管理能力が今こそ問われている。
 一方、地域社会の生活を脅かす企業の不祥事や事故があいつぎ、企業自体の危機管理能力と社会的責任も問われている。

我々の活動

○企業の自立と社会的責任

 地域が自立するためには、地域経済を支える我々企業の自立が不可欠である。企業の自立は、厳しい市場競争に身を置きながら絶えざる変革を実現し、競争力を高めることでしか成しえない。
 地球規模での競争の激化、情報通信技術の発達、絶えまない技術革新、顧客ニーズの多様化など企業経営の環境変化は凄まじく、自社の独自性と強みを磨きあげることが迫られている。厳しい競争を勝抜くためには、経営者の強いリーダーシップと、独自の、競争力の高い商品・サービスの開発を成し遂げることしか途はない。
 しかしながら、企業は利益、経済的合理性を追求するのみ社会に存在するのではない。企業は何のために存在するのかが問われており、企業の社会的責任と社会貢献が強く求められる時代となった。CSR(企業の社会的責任)は、あいついだ企業の不祥事、事故を背景とし、社会の一員として果すべき責任と貢献、信頼構築への取り組みであり、更には持続可能な社会を実現することである。CSRへの積極的な取り組みは、企業が抱えるリスクを事前に予測しながらその発生を未然に防止する危機管理の面ばかりでなく、社会のニーズの変化を先取りしながら競争力を高め、企業の自立を促すことにもつながるのである。

○地域の自立

 地域の自立とは、国に頼ることなく、自己決定、自己責任による自律的な独自の社会をつくりあげることである。そのためには、コストの低い地方自治体経営と地域経済の自立が不可欠である。
 我々は、国に頼らない独自の地域づくりを地域自らの手でつくりあげる好機を迎えて、行財政基盤の強化と行政の効率化を最大の狙いとした市町村合併を強く提言してきた。然るに、現実の市町村合併は、地方自治体の行財政改革の視点が疎かになっており、とりわけ、議員定数や職員の段階的給与引下げによる人件費抑制策が充分に論議されていない。もちろん住民は行政に頼ることなく、ましてや行政サービスを過度に望むことは慎むべきである。
 また、市町村合併の次に道州制が俎上にあがることが明白である今、道州制を迎えても地域間競争に埋没しない、魅力ある且つ自立した地域づくりが求められている。我々も平成9年に「50万人広域経済ゾーン構想」を提言したが、更に進めたい。
 一方、地域経済が自立するためには、特色のある産業創造、既存企業の高付加価値化、地域外への新たな販路開拓、地域外企業の誘致が欠かせない。地域独自の産業を創造するには、固有の集積した技術、人材などの経営資源を活かし、産・官・学が連携しながら、地域の総力を挙げて取り組むことが必要である。特に、原子力関連の最先端技術を活用した特色ある産業創出が待ち望まれている。また、安全・安心な地域づくりは企業誘致の大きなセールスポイントであり、早急に対応しなければならない。災害による操業度低下は企業の致命傷にもなりかねず、いわば安全・安心は産業インフラの要なのである。

○地域社会に貢献する人づくり

 我々が地域社会に貢献できる重要な役割として、人づくりがある。次代を担う人づくりにどのように関わっていくべきかを考えると、日々の企業活動を通して行うことが最も大切と言わざるを得ない。我々経営者、社員、そして家族も含めて地域の一員であり、職場ぐるみ其々が個々の立場で人づくりに貢献することが必要である。企業の人材育成プログラムでも、能力育成とともに地域のメンバーとして家庭、地域社会の人づくりに参加を促すよう取り組んでいかなければならない。
 学校教育は、教育の現場に立つ教員の指導力、人格、資質に負うところが大きい。社会が急激に変化し、教えられる生徒も時代を反映しながら変っていく中で、教員自身も常に資質向上をめざし自己の能力を育んでいかなければならない。そうした観点から、県の教員研修機関と福井大学がより連携して教員の資質向上に努めるべきと考える。
 我々は、産業人の育成も大きな使命であり、企業価値を高め、競争力を強化する源泉となる人づくりに力を注がなければならない。それには、社内での人材育成の充実をはかりながら、県内高等教育機関と連携した能力育成と弛まざる自己啓発で、我々経営者も含めた人材力の総和を高めることが必要である。そのため何よりも、学校法人化をめざす福井県立大学の産業人育成とビジネススクールの運営について、互いに手を携えていきたい。
 併せて、「ボランティア・プロフェッサー制度」や「高校校長会との懇談会」などの事業活動を行っているが、人づくりの連携の点から小・中学校も含めた学校との交流や教育機関との対話を一層進めたい。


 我々は、高い志と見識、そして品格・品性を重んじながら、逸早く地域の課題に取り組んできた。個人として利害を離れた立場で自由に論議する同友会精神は、脈々と受け継がれている。次の創立100周年に向けて会員相互が切磋琢磨し、今まで積み上げた活動に新たな歴史を積み重ねていきたい。