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Do or Die! 「真の改革」の実現をめざして〜自己変革・自己努力・自己責任〜

福井経済同友会   
代表幹事 川田 達男
代表幹事 前田 征利


 21世紀の初年度、大きな期待をもって迎えられた2001年は混迷の幕開けの年となった。

 すなわち、10年以上にわたり長期拡大を続けてきた米国経済が、IT関連産業に依存しすぎた単一経済の脆さから予想以上の速さで減速し、また、市場経済に過度に傾斜していたことから、生産・物流のみならず、金融市場にも甚大なる影響を与えた。また、この間の米国経済の大幅かつ急激な変動は、世界各国の経済に対して輸出の減少、経済格差の拡大などの混乱をもたらし、昨年9月に発生した米国同時多発テロの遠因の一つになったものとも考えられる。

 一方、わが国は第2次世界大戦に次ぐ危機に直面する中、構造改革の第一歩として「省庁再編」で幕開けした。しかしながら、新体制は政治主導の行政をめざすために内閣府を設立したことが評価される程度で、大方は将来の「日本の国家像」や「世界における日本の役割」を考えた変革に挑む体制には程遠く、実際は既得権益の確保・拡大に終始し、国民の批判を避ける為の数合わせによるものであった。

 続いて、「改革なくして成長なし」のスローガンの下に「聖域なき構造改革」を掲げる小泉内閣が誕生した。新内閣では、設立当初の目的や使命を終えた特殊法人等の改革に取り組んだが、依然として現実や将来の厳しさを認識していない自己保身の国会議員や上級官僚の抵抗により改革案が示されるに止まった。

 また、この間、日本経済は国・地方合わせて実質GDPを大幅に上回る財政赤字の下、供給構造のグローバル化と米国経済の減退の影響で低迷し、現象面では、系列を超えた企業の統廃合や大型倒産、そして、リストラや解雇が進み、完全失業率や消費者物価の下落率が統計史上最高を示すなど、経済全体の萎縮が進行する厳しい様相を呈した。

 そして、社会問題としては、公務員の行政施行における不作為や、公務員が関連した倫理観を逸脱した事件の続発とあいまいな後処理、これまでは想像出来なかったような卑劣な犯罪の多発、外国人によると思われる大型の凶悪な犯罪の増加などが閉塞感を加速させた。

 しかしながら、年後半に至り、米・大リーグおけるイチロー選手の活躍、名古屋大学・野依教授のノーベル化学賞の受賞、皇太子殿下ご夫妻にはめでたく内親王のお誕生など明るい話題が明らかになったことがせめてもの救いであった。

○2002年の展望

(国際情勢)
 2002年の国際情勢を展望すると、米国同時多発テロに端を発したアフガン攻撃は、暫定行政機構の発足で一応の決着はつくものと思われるが、根本的な解決には程遠く予断を許さない。また、今後は世界各地においてイデオロギーを超えた地域紛争の火種は絶えないものと予想され、米国経済をはじめとする先進国経済の低迷と後進国の信用不安等が相俟って、引き続き国際間の緊張が懸念される。

 一方、注目を集める中国は、WTO加盟を契機に経済のグローバル化が進展し、更に経済が成長するものと思われるが、急激な経済膨張と政治体制の遅れとのズレは要注意であり、米中関係の変化もあり、21世紀型のパラダイムの構築を模索した厳しい戦いがあらゆる分野において続くものと考えられる。

(日本の情勢)
 このような国際情勢の中、2002年のわが国は、引き続き「聖域なき構造改革」を標榜するものの、今日までの構造改革への取り組み状況を見るに、国会議員をはじめ、中央・地方の公務員、国民全てに危機的状況への認識が乏しく、国をあげて「Do or Die!」の覚悟で臨まなければその先に「日本の明るい将来像」は描けないものと思われる。
 また、産業界でもオーバーカンパニーという構造的危機の状況下にありながら経営者、従業員ともに認識が低く、戦略の欠如ということもあって、改革は進んでおらず、一刻も早い対応が求められている。

 現実には大型倒産、金融システムリスク、失業率のアップ、物価・資産価値の下落、消費の低迷などの修羅場は避けがたく、本年も引き続き実質経済成長率のマイナスが確実視され、デフレスパイラルへの突入は間違いないものと予測される。そして、米国経済の回復如何によっては世界同時不況に陥る可能性をも垣間見る状況にある。

○われわれの考え

 以上のように予測される中、われわれは次のように志高く、強い決意で2002年に立ち向かいたい。
(構造改革の推進)
 すなわち、今日のわが国の現状を見るとき、次代のために「構造改革」は避けられず、痛みに耐えて本来の理念に従ってスピードを速めて推進することが必要であると考える。一部には、不況下における構造改革は日本経済を更に衰弱させるとの主張もあるが、やらなければ、市場がその不作為に対し鉄槌を打ち下ろし、その打撃は更に大きなものになると思われるからである。そして、構造改革実現のためには、主役であるわれわれ経済界がリーダーシップを発揮すべきであり、このためには、これまで「タブー」とされてきた各界に対しても前向きな発言を行うとともに、痛みをも辞さない覚悟で臨むべきであると心得る。

 しかしながら、構造改革を進める中で、その痛みを最小限に食い止め、できるだけ早く回復軌道に乗せるための知恵を絞る必要がある。幸いにして、1920年代と状況は異なり、国民のストック水準が高いことから、適切な対応と将来の展望を明確にアナウンスすることで、直面する消費の低迷、物価の下落、賃金の低下、失業の増加などの難題は乗り切れるものと推測する。

 このためには、痛み対策として、現在のわが国の経済を「異常時」と認識した上で、金融機関の不良債権処理、規制撤廃を大胆に進める一方、雇用対策などの強力なセーフティーネットを構築するとともに、税制改革を含む有効な経済政策を打つことにより「21世紀の日本像」を描けるものと考える。早急なる関係当局と金融機関トップの決断を求めたい。
(われわれの決意)
 次に、われわれ個々の企業経営者としては、依頼心から脱却して、「Do or Die!」の覚悟の下、過去のサクセスストーリーにとらわれることなく、危機感をもって自己変革・自己努力・自己責任の貫徹により「真の改革」の実現をめざしたい。具体的には、自社企業の構造改革を大胆に行い、顧客価値創造の新しいビジネスモデルを構築するとともに、経営のクォリティを高めることにより競争力の強化を図り、健全経営を具現化することにより社会に貢献していきたい。
(地域経営)
 他方、地域経営にあっては、地方分権が進む中、地域間競争に勝ち抜き、県都・福井市の活性化をはじめ地域の「磁力」を高めるために、われわれは企業経営の手法をもって積極的に地域経営に参画していきたい。

 しかしながら、地域経済の担い手である民間企業が疲弊し、地方財政が逼迫する中、上記のことを実現するために行政運営の効率化は避けがたく、行政には、無駄な施策の廃止、議員定数の削減、公務員定数の削減、給与・退職金体系の見直しなどを含む公務委員制度の改革とコストパフォーマンスの重視、行政評価制度の徹底などにより「民間並み」に痛みの負担を求めたい。

 加えて、住民本位で効率的な地方行政システムを確立するために、市町村合併を強力に推進することが必要と考える。

(今後の活動)
 平成14年度は、前年度に引き続き、経営改革をめざして経営の品質を向上させるための活動を推進するとともに、次代の人材育成と新産業創出のために、産学官連携を軸とした組織横断的な活動を企画し、全国のモデルとなるような活動をめざしたい。

 また、平成13年度の事業として、三つの特別委員会、すなわち「地方行財政を考える委員会」「新時代のリーダー像を考える委員会」「教育問題を考える委員会」を創設して研究を重ねてきたところであるが、近々そのまとめが出来上がることになっている。そのまとめの主張を尊重してそれぞれに具体化を進めていきたい。