活動報告

福井大学地域共同研究センター協力会

福井大学と福井大学地域共同研究センター協力会とのトップ懇談会

日 時 平成19年3月8日(木) 15:00〜17:00
会 場 福井大学総合研究棟1 13F 会議室
参加者 86名(内協力会会員 45名)

 第7回福井大学と福井大学地域共同研究センター協力会とのトップ懇談会」は、福井大学総合研究棟の13階会議室で開催された。福井大学地域共同研究センター協力会の会員数が178社と大きく伸びるのに従い、懇談会での会員参加も45名と着実に増えてきた。
 協力会の今村会長の挨拶では、「ものづくり福井」の産学官連携に対する期待と、福井経済同友会が2月に発表した地域経営委員会、人づくり委員会の提言を紹介した。4月から福井大学長に就任予定の福田・福井大学副学長は、産学官共同研究を更に推進するため、新年度から窓口・支援事業を一元化した「産学官連携推進機構」と国際的な連携促進をはかる「国際交流推進機構」を設置する方針を挨拶の中で示した。
 続いて、高島福井大学地域共同研究センター長から活動報告がなされた。その中で、福井大学は研究の成果を広く地域社会に提供して貢献することを使命とし、「知の融合」と「人の交流」を産学官連携の基本に据えることを述べた。特に、大学での「知の創造」を企業が事業化、製品化するため、成果目標を設定することで「知の移転」が有効になされ、サイクル化するよう取り組むことを説明した。また、産学官連携の4つの窓口を一元化し、「ワン・ストップ・サービス」で最後までフォローする一貫体制に取り組むことも表明した。福井大学の方針として、産学官連携のより一層の成果追求めざし、地域貢献する姿勢を鮮明に打ち出していた。
 その後の懇談会では、協力会側、大学側、県などから活発な発言が相次いだ。
 主な意見要旨は以下の通りである。

○産学官連携の体制

(協力会側の意見)
@産学官連携の成果をあげるため今までの懇談会で意見を申しあげてきたことが、きちんと対応されている。具体的には、大学改革により意識が変化し、組織体制が再構築されている。これだけ大学が変わったのかという驚きと同時に、その取り組み姿勢は高く評価する。
A大学側にまずスピードある対応をお願いしたい。また、医学部との交流もはかるようお願いしたい。
B産学官連携は、平成7年に協力会ができた当時と比べ、隔世の感がある。大変な進歩であり、産業界も今以上にバックアップする責任がある。
C欧米と比較し、日本の産学官連携は遅れている。欧米では地域が一体となり支援している。福井でも今後の課題であり、福井大学には大きな期待をしている。
(福井大学側)
@福井大学は、ワン・ストップ・サービスの組織体制に改め、対応力の向上に努める。そして、新しいシステム(仕組み)で体制整備し、産学官連携には、本気で取り組む覚悟である。
A産学官連携について、医学部は遅れており今後の課題である。しかし、スーパーハイウエィを利用して、医療機関に画像を送り診断する計画はある。

○産学官連携の産業分野

協力会側)
@福井の地場産業である、繊維、眼鏡などの技術が集積されており、こうした技術を活かすべきである。
A繊維は、1960年代に炭素繊維が生まれ、それ以降には新しい繊維が生まれていない。
(大学側)
@繊維、眼鏡、原子力関係など福井の特色ある分野を強化していく。

○産学官連携の共同研究

(協力会側)
@相談や共同研究を進めるうえで、大学側の先生によって対応に温度差がある。地域共同研究センターは、こうした課題について、如何にしてコーディネートしていくのか。
A産学官連携では、もう少し共同研究のマトを絞ってほしい。
(大学側)
@共同研究するうえにおいて、大学に研究を任せっぱなしで、成果だけ求める企業もある。企業も努力するべきである。
A大学の教員間の横のつながりは弱い。今後、産学官連携推進室などにより、教員間の連携を深めたい。

○人材育成と就職

(協力会側)
@福井県内には魅力ある企業が多いにも拘らず、福井に就職する学生が少ない。学生の地元就職に注力してほしい。
A学生の定着も必要であるが、「数学」などの基礎学力もつけるべきである。また、企業に就職した人材を大学が育成することも必要である。
(大学側)
@地域貢献の最大は人材育成である。福井への地元就職については、学生の意識改革に努める。
A大学にはリカレント教育制度があり、聴講生として受け入れている。

○経済界と大学の研究者との交流

(協力会側)
@経済界の若手経営者と、大学の助教授クラスの研究者との交流の場を設けてはどうだろうか。
(大学側)
@若手教員との交流はぜひとも実現をお願いしたい。大学側も積極的に応じたい。

○大学の海外展開

(大学側)
@大学全入の時代を迎え、海外からの学生募集も視野に入れている。また、アジアを中心とした海外拠点を設け、研究や学生の確保もはかりたい。

○大学側への要望

(協力会側)
@福井は繊維産業で地域経済が潤ってきた。しかるに、今は福井大学に「繊維」の名前を冠した学科がない。繊維の研究部門をまとめ、復活してほしい。

○その他

(大学側)
@日本の大学を財務力、教育力、就職力で評価したら、福井大学は全国で第14位であった(東洋経済より)。福井大学の評価は、地元では知られていないが全国的に高い。

 

 福井大学は平成15年10月に独立法人化され、ほぼ3年半が経過した。その間の大学改革の取り組みが、大学関係者の意識変革を促し、柔軟な産学官連携の組織体制を生みだした。大学の将来像を描きながら経営戦略を立て、着実に進む姿は、企業経営者としても大いに刺激されるものである。また、大学改革のスピードは速く、その成果は共同研究や受託研究などにもはっきりと出ている。今後、産業界、地域は、福井大学の「知」に期待する半面、どのように活用するのかが大きな課題である。