活動報告

セミナー

第20回全国経済同友会セミナー

テーマ 「『ふるさと愛』が日本を支える」

日 時 平成19年4月12日(木)・13日(金)
会 場 石川県立音楽堂、金沢全日空ホテル、ホテル日航金沢
当会参加人数 27名
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 第20回全国経済同友会セミナーは、隣県の金沢経済同友会が担当し、全国45の経済同友会から1,100名を超す会員が参加した。本セミナーは、金沢経済同友会の創立50周年記念事業の一環として招致され、1994年以来13年振りの金沢開催であった。
 今回は、「『ふるさと愛』が日本を支える」をテーマに、社会の成熟化と価値観の多様化の中で、地域の現状を見つめ直しながら個性を生かした地域づくりについて4つの分科会で議論を深めた。
 開会式では、全国経済同友会セミナー企画委員会の茂木友三郎委員長が「各地域の特色と個性を活かし、地域が競い合うことが日本全体の活力につながる」と挨拶した。続いて、開催地である金沢経済同友会の飛田代表幹事は「地域の伝統、文化を地域の人々がよく知ることが誇りや自信につながる。それが地方を元気にし、元気な地方が集まって日本が元気になる」と歓迎の挨拶を述べた。
 本セミナーでは、ジャーナリストの嶌信彦氏が「21世紀の感性〜企業を活かす、地域を活かす〜」と題して基調講演を行った。講演では、「21世紀は女性とシニアが先導する時代である。また、環境、安全、医療、健康、教育などに関連する企業が脚光を浴びる。地域においては、場所の力を信じることが大切であり、それを客観的に見、全国に発信することが必要である。黒川温泉、旭山動物園、ニセコなどは良い例である」と話した。

 その後、4つの分科会に分かれテーマごとに討議が行われた。要旨は以下の通りである。

第1分科会 「地域活性化のための国、自治体、経済人の役割」

 地域は少子・高齢化、行財政の疲弊など多くの課題を抱えているが、持続的な発展をめざしていくために何をなすべきかを議論した。
 第1セッションは、「日本の活性化と地域主権」について意見を交わした。主な意見は、@地方分権を進める上で、人口減少に対して知恵を出すことや、コミュニティの問題解決力を高めることが必要である。道州制についても、中央官庁や国会議員の抵抗が予想されるが、世論を味方につけ、国民の支持を得ることが肝要である。A全国をいくつかに分け、そこに権限と財源を大幅に委譲すべきである。B道州制は早めに議論すべきであり、地震に対するリスク管理の観点も必要である。
 第2セッション「自治体の経営」
 自治体の破綻も発生しており、債務調整を検討すべきである。A徳島の上勝町では、「いろどり」事業により町が活性化した。「自ら考え、行動することが大切である」B経営とは、自らの使命や目標を明確にし、具体的な道筋を立て、経営資源を効率的に配分する。その過程をチェックし、環境変化などで差異が生じれば、迅速・的確に手を打つ。これは自治体経営でも同じである。経営改革が自治体でも求められている。
 第3セッション「経済人の役割」
 @企業は地域に目を向ける。A人材育成などが挙げられた。

 この分科会では、経済人は地域活性化、地域主権の実現に積極的に関与していかなければならないことでまとめられた。

第2分科会 「外国人から愛される日本にするために」

 人口減少の時代を迎え、優秀な人材を確保することが日本の国際競争力を高めることにつながる。とりわけ、外国人の力も不可欠であるが、果たして日本は外国人にとって「魅力」のある国かを議論した。
 主な意見として@有能な外国人研究者や労働者を引きつけるには文化交流が必要である。A日本人は異文化を理解し、共存共栄をはかるべきである。B日本人は、まず自分の国の文化の良さに気づき、自信と誇りを持ってほしい。C世界は頭脳獲得競争に突入しており、外国から頭脳を受け入れやすい仕組みに変える必要がある。C外国人留学生の育成には地域との連携が必要である。

 この分科会では、技術立国をめざし世界の頭脳を集めるには、受入れ体制の整備、文化交流、地道に日本の良さを広めるような取り組み、英語教育の充実などの見解で一致した。

第3分科会 「歴史と文化と風土をいかした地域づくり」

 この分科会では、歴史や文化を生かした地域づくりを通じて、成熟化した経済社会における地域やふるさとのありようを討議した。
 小菅・旭山動物園長は、動物園では行動や仕草を見せる工夫をした。「動物がなぜ動くのか」を考え、動物の動きを直接見せることで感動してもらえた。
 松浦・松江市長は、松江を「水の都」、歴史ある松江城と武家屋敷、文化とりわけ「茶」と「和菓子」などで売り込んだことを紹介し、「街が人をつくる、人が街をつくる」ことの大切さを強調した。
 三輪・九州国立博物館は、これまで取り組まれていなかったテーマの発掘、保存修復技術の実演・公開、子供が楽しめる企画などにより開館2ヶ月で地域に180億の経済効果を生み出したことを述べた。

 この分科会では、地域には豊かな歴史、文化、風土があり、これらを磨き上げることで、新たな地域の魅力が創出、再発見できることを再確認した。

第4分科会 「ふるさと愛には"教育"が必要だ」

 なぜふるさと愛なのか」「なぜ教育が必要なのか」「ふるさと愛を育むための経済人、企業の役割」の3つに論点を分けて進められた。
第1セッションは、「いま、なぜ、ふるさと愛なのか」
 @ふるさとの歴史や文化を学び、ふるさと愛を育むことが、地域の振興、発展に必要である。A土地の言葉、方言を大切にすることで、いままで気づかなかったふるさとが見えてきた。B自尊感情、つまり自分や自分とかかわりがある人やモノを大切にすることが欠かせない。Cふるさと愛が能登半島地震の復旧、復興に大きな力を発揮した。まさに「地域力」である。
第2セッション「なぜ"教育"が必要なのか、どう"教育"していくか」
 @ふるさと愛は自然に生まれない。歴史や文化の教育をする具体的行動が必要である。A地域の多彩な文化を体験したり、地域のイベントに参加する機運をつくる。Bまず地域を知ることである。また、地域の歴史、風土が如何に素晴らしいかを伝えていくべきである。
第3セッション「ふるさと愛を育むために、経済人、企業が果たす役割」
 @口と手を出してほしい。人、物、金、情報という資源を学校教育、地域教育に提供してほしい。A県外から来ている経済人に、食べ物や祭りなどのふるさと自慢をしてほしい。B企業は地域とともに栄える精神がほしい。C県外からの進出企業に、地域活動の参加、経済団体の加入を求めたい。

 この分科会では、地域を構成する「企業市民」として、地域の行事に参加するなどの地域貢献が必要である、これがCSRでもあるとまとめられた。



 第2日目は、各分科会からの報告のあと経済同友会(東京)の北城代表幹事が、「地域の発展なくして日本の発展はない。人口減少下の日本では、自ら努力することと、イノベーションが求められている。イノベーションは、それを担う人材育成が必要であり、世界中が優秀な人材獲得の競争をしている。資源がない日本では、科学技術で生きる道しかなく、人材の育成は急務である。イノベーションには3つの大事なことがある。一つは高い志、二つめに挑戦、三つめは情熱(パッション)である」と述べ、最後に本年度4月の総会で退任するため、4年間を振返っての感想で締め括った。


 続いて、「殿様の食卓」と題した特別講演が行われた。講師として、石川県立歴史博物館学芸専門員の長谷川孝徳氏、富山短期大学助教授の陶智子氏のお二人が登壇した。講演は、主に長谷川氏が話し、時に陶氏が質問や解説で加わる形で進められた。加賀前田家のお殿様の食事の内容を、残された古文書から解き明かし、膳に並べられた料理の品々を具体的に説明した。お殿様と言えども、それほど贅沢をしているわけではなく、思った以上に質素であったことを実感した。特に、将軍家にお目見えする時は、昼食後のため、眠くならないように「でんぷん類」を多くし、脳に血流が行くようにしたとの話は興味深かった。


 来年の第21回全国経済同友会セミナーは京都で開催予定であり、古都の歴史と文化、都おどりなどを紹介しながら、次期開催地の挨拶が行われた。京都経済同友会は創立60周年の記念事業として来年の全国セミナーを誘致したが、当会としても、3年前の西日本大会で協力いただいたこともあり、多数の会員参加に向け協力を呼びかけていきたい。