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「新生 福井」へ 産〜より自立、学〜より地域のため、官〜より小さく

福井経済同友会   
代表幹事 川田 達男
代表幹事 前田 征利


 2002年年頭、福井経済同友会は、「Do or Die!」の覚悟の下、一方では個々の企業が危機感を持って「真の改革」を実現することによって自社企業の経営を健全化し、これによって企業の社会貢献を実現することを決意した。他方、地域の経営においては、福井県の活性化や地域の「磁力」を高めるために、「経営の手法」をもって積極的に参画することとし、次のような活動と提言をおこなった。

  • 京福線存続問題については、行政、民間企業、経済団体が一体となって早期運行を再開することを願い、第三セクターに対し、出資金協力と人的協力を積極的におこなった。
  • 8月には極めて低調な県内の取り組みを憂慮し、『「市町村合併」の促進に向けての緊急提言』をおこない、合併協議会の早期設立を促し、啓蒙活動などで気運醸成を図った。
  • 10月には原発立地県として、原子力の人材と情報の蓄積をはかることにより、地域の新産業を創出する可能性が大きいものと考え、『「総合エネルギー大学校」福井設立に関する提言』をおこなった。
  • 地域の課題を共有し、地域性を再認識した上で個々の問題について提言・協力することを目的に、昨年は「敦賀地域」「小浜地域」の嶺南を中心に懇談会を開催した。嶺南では同じ県内でありながらも、嶺北には耳新しい事柄が多く、地域経済の活性化のためには情報の共有化の必要性を痛感した。

 さて、2002年の世界経済のカギを握る米国経済は、ハイテクバブルの後遺症に会計不祥事が重なり、景気回復には力強さを欠き、個人消費の腰折れ懸念が出始めるなど、先行きの景気減速への警戒感が強まっている。
 一方、わが国経済は、停滞する構造改革の中で、深刻さを増すデフレの進行、米国景気の失速懸念も加わり、平均株価はバブル後最安値を更新し、完全失業率は過去最悪を記録するなど、日本経済の先行きは五里霧中の状態である。
 こうしたなか、政府は漸く日銀との足並みを揃え、不良債権処理を加速することで金融システムの速やかな回復を図るとともに、金融と産業の早期再生を実現するため、「改革加速のための総合対応策」が発表された。部分的にはまだまだ不透明な箇所が多いが、新しい国づくりに向けた第一歩として考える。

 このような日本経済の閉塞感の中で、年の後半に至り、日本人初のダブル受賞となった小柴昌俊名誉教授のノーベル物理学賞、田中耕一氏のノーベル化学賞の受賞は、沈滞ムードの日本の社会に大きな勇気と希望を湧出し、日本国民に自信回復の材料を与えた。と同時に独創的な発想を創出する社風、チームワークの良さを生み出す環境の大切さを教えられた。

○2003年の展望とわれわれの基本的態度

 世界の現状は、日・米・欧三極の同時デフレが進行しつつあり、イラク情勢が緊迫の度合いを深め、依然として緊張状態が続くと考えられる。

 わが国の本年は、停滞していた改革が加速する「構造改革本番」の年となり、日本が変われるかどうかの正念場になると捉える。経済の長期低迷、「負の遺産」の重圧、少子高齢化・グローバル化・IT化などへの対応の遅れ、企業の国際競争力低下の懸念、公的部門の肥大化・非効率化、財政赤字の拡大など、危機的状態からの脱却によるわが国の再生・復活はまさに構造改革の成否にかかっていると考える。今後、不良債権処理の具体策及び経済活性化や景気対策などの総合的な対策が早いスピードでタイミングよく発動されることを期待する。

 改革加速の対策が講じられることにより、ますます大きく激しい変化が生じると考えられ、われわれは好むと好まざるにかかわらず、この競争社会における変化と厳しさを受け入れる気概と覚悟が必要である。

 そのためには、産・学・官それぞれの経営の目的は異なっても、組織や人を活性化させるメカニズムは共通であり、「自立」のスピリットを確立することが重要な前提と考える。甘え・もたれ合いの構造、受動的マインドなどの「危機感の欠如」から脱却し、「自立」への果敢な挑戦をすることは、自らを磨き、それぞれが実力を発揮することにより、社会全体に活力をもたらし、新しい価値を生み出すものと考える。

  • 「産」は、国際社会の中で生き残り、敬意を払われるためには、社員を資産として重視し、社員が持つ創造性や成長可能性を信じ、企業内コミュニティを通じて社員と向き合い、社員それぞれの自己実現を図れるような「個」を生かす企業経営を必要とする。同時に、組織の先端に至るまで自らの信念を浸透させ、変革を受け入れる組織風土を創造するリーダーを必要とする。
  • 「学」は、国立などの独立法人化を目指す中で、実践の厳しさに耐えうる強じんな基礎知識、正しい理論を教える教育活動を行い、地域の課題を連携協力して探究することにより、地域社会への貢献につなげることが必要である。
  • 「官」は、市場に資源配分を委ねる民間主導の経済社会の構築をしなければならない。

 行政サービスのプロセスの中で民間が代行できるものは民間に委託し、情報技術(IT)の徹底的利用、アウトソーシング、PFIの導入などにより歳出のスリム化、効率化を計り「小さな政府」を志向する必要がある。

○具体的活動

 われわれは、経済人として、「自立」を基本とし、「新生 福井」の創生に積極的に参画していくことを決意する。

 経済同友会は、経済の深刻な局面の中で、全国的に会員が減少するなど厳しい状況に置かれている。また、各種の経済団体、業界団体の改革が進行している。

 われわれ経済同友会は、会員資格を個人としており、多様な価値観を持った人々が集い、企業からの制約を排除し、自由な発言、活動をするユニークな団体である。われわれは、その存在意義を再度明確にし、これまで以上に経済人としての豊富な知識や経験のもとに、「地域のオピニオンリーダーとしての自覚と責任を持ちながら、地域が抱える種々の課題に対して自主的・積極的な政策提言活動を展開し、地域の発展に貢献していくこと」というわれわれの使命をはたしていかなければならない。

○地域主権確立

 本年は地方統一選挙が実施され、地方分権時代において、福井県が新しく生まれ変わることができるかどうかの大きな意義を持つだけに、有権者の積極的な参加と政策能力や人物が投票基準となることを期待する。

 地方行財政改革は構造改革の最重要課題であるが、このままもたれ合い、甘えの構造、地域力の抑制が続けば破綻は免れない。その場合困窮するのも債務を負うのも地域住民であるという認識の下で、個性・自立・競争・責任を重視した地域主権型のシステムを確立しなければならない。 地域が自ら考え、創意工夫することから、無駄や非効率が排除され、地域の発展と地域住民の暮らしに役立つ行政が行なわれるべきと考える。そのためにも、まず市町村合併を積極的に早急に推進することが必要と考える。

 地方行財政改革を実施していくためには、多くの制度改革と法律改正が必要となるが、我々はそれと共に地方公務員制度の改革が不可欠と考える。不断の経営改革に取り組む我々経営者の視点からすれば、最早、これを聖域としておくことはできないと考える。

○持続可能な循環型の社会へ

 21世紀は、「環境の世紀」として、環境への負荷を出来る限り少なくし、自然と共生しながら、資源・エネルギーの有効活用が求められている。循環型社会の実現には、新たな制度、新たな技術、新たな事業など新たな社会システムの構築が必要である。県民、事業者、行政が環境への配慮を念頭におきながら、社会・経済活動を営むとともに、新たな産業として環境関連産業の立地、雇用の創出を図るなど積極的な取り組みがされることにより、低迷する経済状況を打開するヒントを見つけられるものと考える。

○嶺南との一体化

 嶺北・嶺南は福井県を二分する地域意識を形成する言葉として、政治・経済・日常生活の様々な集団的利害を規制し、規定する言葉として生き続けているが、われわれは、福井県は嶺北と嶺南が一体となって存在しているということを認識すべきである。「福井県誕生」の初心に帰り、県の均衡ある発展と明るい展望を切り開く努力をし、「若狭路博」などの活動に参画し、支援していきたい。

○福井の歴史再発見

 NHK大河ドラマ「武蔵」が放映され、福井は佐々木小次郎ゆかりの地として、全国に紹介される。福井は、古代から中世、幕末にいたるまで、さまざまな歴史の表舞台に登場し、時代を先取りする先進性を持った人物を数多く輩出している。福井及び福井の歴史を知ってもらうチャンスと捉え、経営活動の中で、他県からの観光客の動員に努力したい。


 これらの運営に当たっては、昨年に引き続き、運営委員会、企業経営委員会、地域経営委員会を中心に、必要に応じ特別委員会を設け、委員会活動の活性化を図る必要があると考える。