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21世紀、「個の時代」にふさわしい社会システムの構築に向けて〜真の変革をめざして「常識」の破壊と独創力の発揮を〜

福井経済同友会   
代表幹事 三田村 紘二
代表幹事 川 田 達男


 西暦2001年、21世紀の第一歩を踏み出した。わたくしたちはこの歴史的な転換期を迎えるにあたり、わが国の更なる発展を期するために、ここで、日本を世界第二の経済規模の大国に育て上げた20世紀体制を検証してみたい。

 19世紀後半、約300年の長期にわたり続いた幕藩体制の崩壊後、近代国家の確立をめざしたわが国は、中央政府主導のもと、先進西欧文明を取り入れながら、優れた国民性や義務教育制度に支えられて工業国家路線を推し進め、天然資源に乏しい日本を世界に冠たる輸出国家へとその国力を伸張させてきた。

 しかしながら、わが国がその頂点を極めた1980年代後半より、グローバル化とIT化の進展に加速されて世界の供給構造や市場構造の変化が進み、とくに、東西冷戦の終結により大きく転換することとなった。そして、個人の価値観も大きく変化してきた。これに伴い、わが国がめざしてきた、先進諸国へのキャッチアップを指向し、大量生産を主とした工業化路線は転換を迫られることとなった。

 そして、このことは、今日まで機能してきた行政システムの見直しや諸規制の撤廃要請を顕著化させ、また、市場の進化に伴い、われわれ経営者の経営倫理、コーポレートガバナンスのあり方などが厳しく問われるようになってきた。合わせて、地球規模での環境問題や財政再建、少子高齢化時代における雇用システムの問題なども避け難き課題として現実化してきた。

 わたくしたちは、21世紀を迎えるにあたり、新しい時代にふさわしい社会システムを構築するためには、従来の延長線の改善に留まらず、真の変革が必要であることを認識するとともに、変革の実現のためには、これまでの「常識」の破壊をも辞さず、独創力を持ってその実現に向けて努力していきたいと考える。

わたくしたちの決意

○民主導による新しい社会の実現と企業経営者の社会力の発揮

 わたくしたちが予ねてより訴えてきた問題解決が遅々として進まない中、新世紀を迎え、社会経済の主要な担い手であるわたくしたち経営者は、光り輝く福井、そして日本の実現に向けて、他の社会の構成員グループと連携して行動する必要があり、また、責務と考える。

 すなわち、グローバル化とIT化の急速な進展は、企業経営、経済、社会、教育、政治行政、外交などあらゆる分野で、否応無しにグロバールスタンダードでの解決を求めており、問題を直視した、高い志と固い信念に裏打ちされたリーダーシップのもと独創力の発揮と「個の時代」への的確な対応が求められていると考える。そして、この役割と責任を果たしていくためには、わたくしたち自身が、横並主義、権威主義、先例主義、既得権益擁護といった構造化された価値観に固守することなく、真の変革者をめざして、厳しく自己を律しながら社会力を発揮していかねばならない。

○「常識」の破壊と独創力の発揮

 言うまでもなく、わたくしたち経営者の基本的使命はプロの経営者として、積極的に市場競争に立ち向かい、絶えざる効率性の追求やイノベーションによって、顧客が認める経済的価値を創造し提供することである。そして、このためには、均質性と安定性に主眼をおいた20世紀の「常識」を創造的に破壊し、自己革新に向けて、高品質で低コストの製品の提供のみならず、資本効率の適正化と経営資源の最大化をはじめ、人材の育成と活性化や環境問題への対応、地域社会との調和、情報開示による透明性の確保と説明責任の履行などに独自性の発揮が求められている。特に、市場参加については、「経済性」に加えて、「個の時代」を迎えて、価値観の変化に対応して市場に「社会性」や「人間性」を加味することにより「市場の進化」を実現し、成熟社会への対応ができるものと考える。

○真の産学官連携による個性豊かなまちづくり

 次に、わたくしたちの活動基盤である、地域の問題については、国や地方の財政事情が極めて厳しい中、中央省庁の再編や、地方分権や市町村合併、そして、少子高齢化時代への対応が求められる環境下において、中央と地方の関係、地方行財政と住民の関係、都市開発においても当然に新しい時代への対応が求められてきている。

 わたくしたちは、地域間競争が激化するなか中で、福井の磁力を高めるために県都の整備問題は喫緊の課題であり、環境変化を踏まえて、地域住民はもとより、福井県や福井市とも連携を密にして21世紀にふさわしい、個性豊かなまちづくりに参画していきたいと考える。このために、先にわたくしたちが提唱した「県民まちづくり議会」をめざした動きとして回を重ねている「ふくい市民会議」において検討されている、「イタリアのまちづくり」を範とする活動にも参画し、支援していきたい。

 わたくしたちは、以上の決意を実現するために、高い志のもと、自信と夢を持ち、洞察力と決断力、そして行動力を持って臨む覚悟である。

福井経済同友会の活動

 わたくしたちは先に述べた決意にもとづき、引続き、設立の趣旨にそって、自己啓発と相互に切磋琢磨しながら資質の向上を図るとともに、次のような新しい活動を通して、21世紀の新しい福井づくりに貢献してまいりたい。

○特別委員会制度の創設

 経営者として、タイムリーな提言や意見表明活動を通して、従来以上に社会力を発揮するために、研究組織として、特別委員会制度を創設する。

○ボランティア・プロフェッサー制度の創設

 人材育成と産学連携を推進・支援するために、会員によるプロフェッサーバンクを設置し、大学・高校等の要請に基づき、会員プロフェッサーをボランティア活動として派遣する。

○準会員制度の創設

 会員の所属企業の人材育成に資することを目的として、会員の後継者、及び、会員の所属企業の役職員を対象とする準会員制度を創設し、経済同友会活動への参加を通して人材の育成を図る。

○個性豊かな県都整備推進への参画

 21世紀にふさわしい、個性豊かな県都整備をめざして、諸活動に積極的に参画し、その具体化をめざす。